ボルドーパイン、
大らかなるエスプリ
QUALITY
ワインで有名なボルドー地方の恒久的管理下にある森林で育ったボルドーパイン。
これは当社の商品名で、正式名称は「フランス海岸松(Pin Maritime、パン・マリティム)」と呼ばれる樹種です。
樹齢60年という充分に成長した海洋性パインならではの力強いテクスチャーとコントラスト、針葉樹としては類をみない高い硬度を持っています。
その質感や表情の高級感を伴った力強さと味わいを深めながら、松ならではの保温性や快適な歩行感をいつまでも保ちます。
「チープな見た目と脆さ」という一般的なパインの印象とはかけ離れた性質のみならず、油分を多く含み、重厚さを増す独特の経年変化を見せることがこの樹種の本領。しっかりとしたテクスチャを持つ外観ながら、全く飽きさせることなく魅力を増していく良材です。
私たちはその個性的な材と日本をつなぐ窓口として、実用性と遊び心を大切に、各種フローリング・パネリング材をご用意しています。
裏話ですが、毎日木を見て、触れて、木の話ばかりしている私たち建材事業部スタッフの間で、外装材のレッドウッドと並んで「スタッフ自邸への採用率」が最も高いのがこのボルドーパイン。この文章を書いている私自身もひとりのユーザーで、多くの大先輩たちからもその話を聞かされています。
飽きがこなく、魅力を増していく。生産地では表層を削ることで何世代にもわたって使い継がれるというこの材ですが、それら豊かな文化的背景が育ったのはやはりこの樹種の性能と産業としての優れた点があってのことです。
是非皆さんの目で見て、触れて、香りも楽しんで、その魅力をお確かめください。
STORY
沿岸の暖流と偏西風の影響から、比較的高い緯度になりながら温暖な気候のフランス南西部アキテーヌ地方。西側に広がるビスケ湾一帯は、近年ではリゾート地として栄え、バカンスシーズンには一気に人口が数倍にも膨れ上がります。
今でこそ穏やかなバカンスの地としての表情を持つビスケ湾一帯ですが、17世紀までは湾に押し寄せる強い海風、大量の砂、塩害、海水により浸食に悩まされ、産業や居住に困難な、いわば海水の沼地の様相であったと伝えられています。
これらの問題を解決すべく、19世紀、ナポレオン3世の時代から植林が開始されました。その環境との親和性、ぬかるんだ大地から大量の水分を吸い上げ空気中に還す特性、そして防砂林としての高い有効性から、海洋性クロマツに分類されるある樹種に白羽の矢が立てられました。これが現在のボルドーパインの森の起源です。
時を経て、現在のアキテーヌ地方は、100万ヘクタールという広大な植林を有し、そこに根ざした豊かな産業が循環する地に生まれ変わっています。
ボルドーパインが一般のレッドパインと異なる点は、太く力強い枝振り、灰色の分厚い鎧のような樹皮、樹全体の油分の多さがあげられます。60年という樹齢に至るまで沿岸の風圧にされされるボルドーパインは、揺らぎながら撓みながら、繊維の破壊と、自ら樹脂を大量に巡らせ再生を繰り返して成長していくことで、粘りある強度と、重厚な経年変化をもたらしているのです。
かの地の歴史が紡いだ特別強固な無垢材を、時とともに増す豊かな表情の無垢材を、自信を持ってお届けします。
EPISODE
ボルドーパインの森の一帯はリゾート地として人気のある場所です。室内からデッキへ、デッキから海へと素足で過ごす、靴文化のヨーロッパにはないスタイルで滞在する人が多くなっていました。この地域で生産されるボルドーパインの上での歩行感が、ことのほか心地よいと評判に。ある建築家がボルドーパインのフローリングの質感をさらに感じられる、デザイン的なモノができないか、とテラシスと提携している製材所に依頼に来たのです。
そこで製材所が開発したのは、日本の浮造りやちょうな加工と酷似したフローリングでした。製材所の方がが日本に来たとき「サビ・サビってこういうこと?」と言いました。私たちは日本の伝統的な表面加工を見せ「エスプリってこういうこと?」と答えました。ビジネスの枠を越えたつながりを感じ、お互いが笑顔になったのは言うまでもないでしょう。